先日参加した第9回世界ファブラボ会議国際シンポジウムについて、三回の記事にわけてご紹介します。
ファブラボ(FabLab)とは、個人が自由にものづくりを行える実験工房の世界的なネットワークであり、3Dプリンターやレーザーカッターなどの各工作機器が備わっています。今回日本で開催された会議では、世界各国におけるファブラボの活動紹介や、今後のファブラボの在り方について、各国から関係者が集まって議論・講演を行いました。今回の記事では、実際にFabLab関係の施設を見学した様子、およびシンポジウムについて紹介します。
Fab Lounge・Super Fab Lab見学
シンポジウム参加前に、今回のファブラボ会議に備えて特別に設置されたFab LoungeおよびSuper Fab Lab内を見学させて頂きました。会場内には、Roland・ルネサスなど各メーカーが開発した製品や、実際に日本各地のファブラボで製作された作品などが、所狭しと展示されていました。
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左: Rolandが開発した3Dプリンタ / 右: 廃品から再びモノを作るプロジェクト
現在、日本には鎌倉・つくば・渋谷・北加賀屋・仙台・関内の六ケ所にファブラボが存在します。各Labの詳細についてはこちらをご覧ください。
ファブラボ国際シンポジウム
午後からはいよいよ国際シンポジウムが始まりました。各講演内容を講演順に簡単に紹介していきます。公式サイトでも各スピーカーのプロフィールを見ることができるので、合わせてご覧ください(各講演のタイトルをクリックすると講演者のプロフィールが表示されます)。
1. イントロダクション―第9回FabLab代表者会議までの旅程
まず初めに、慶応義塾大学SFCの准教授であり、今回のファブラボ会議の実行委員長でもある田中浩也氏によって、ファブラボ会議に関する説明が行われました。今回の会議には世界39カ国から約250人が会議に参加しており、一週間という期間の中、各国のファブラボにおける活動紹介、今日のメイカームーブメントに関する招待講演、その他教育や産業、国際開発などといった議題に関する分科会などが行われました。また、1960年に日本で行われた世界デザイン会議にも言及し、メタボリズム(新陳代謝)というデザインコンセプトに代わる新しいコンセプトを今回の会議で生み出したいと語りました。
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二番目のスピーカーは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のビット・アンド・アトムズ・センター所長 であるニール・ガーシェンフィールド氏です。ニール氏は本会議を、ファブリケーションの革命について語るための会議と称しています。かつてはコンピュータなどに代表されるように、機械を用いて素材を作ったり、他の機械を生み出す事が主流となっていましたが、今日では、機械を組み合わせる・解体することによってデジタルな素材を生み出すという第三の革命が起こっているそうです。
ニール氏は、MITで行われているアウトリーチプロジェクトの紹介や、途上国における問題解決ツールとしてのデジタルファブリケーションが持つ可能性について触れた後、「今後個人によるモノづくりが普及し、誰もが好きなものを自分自身で作れるようになった場合、どのように社会が機能するべきかについて私たちは議論していかなければならない」と締めくくりました。
次に、東京大学大学院博士課程に在籍する青木翔平氏と、ガーナ出身で現在はアメリカで機械工学を学んでいるアブー・アダム氏によって、世界各地のファブラボの紹介が行われました。各ファブラボには、レーザーマシン・フライス盤・3Dプリンターなど、自分で作品を作るために必要な様々な工具が設置されています。現在、世界各地に250箇所以上のファブラボが存在し、年々その数は増加し続けています。
彼らは、お城の一部を工房としているオランダ・アムステルダムのファブラボや、酒蔵を再利用した日本のファブラボ鎌倉など、世界各地のユニークなファブラボを紹介してくれました。また、インドのファブラボで作成したものを売りながら生計を立てている人々の例を挙げて、ファブラボがビジネスモデルを構築する場としての役割を果たしているということを示しました。
このように、国家間の多様なネットワークを利用すると同時に、地域におけるコミュニティの場としての役割を果たすことで、FabLabを通じて革新的なものを作ることができるという事を、スピーカーの二人が熱く語ってくれました。
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四番目のスピーカーは、ノルウェー出身のイェンス・ディヴィク氏です。彼は世界各地の25箇所のファブラボを訪ね歩き、そこで行われている様々なプロジェクトの様子を映画にまとめました。イェンス氏は、ファブラボでは作る対象よりもプロセスが重視され、また、ものを作るというよりはコラボレーションの場を作るためのものだと語りました。以下の動画は彼が作成した映画の一部です。
第一回の記事はここまでになります。次回の記事では引き続きシンポジウムで行われた講演の紹介をしていく予定です。